7月20日、参議院国際問題調査会において委員間で対中国外交についての自由討議が行われました。この調査会は着席したままで、各委員が自由に発言できる参議院ならではの委員会で、当日は靖国問題や歴史認識の問題をめぐって対中国外交をどう展開していくべきかについて、与野党の議員がお互いに質問し合うなど活発な議論ができました。
私は、靖国問題などで揺れる対中国外交の陰で埋もれがちな通貨外交、特に人民元の変動幅拡大を要請していくべきことを述べました。
その要旨は以下の通りです。
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中国は現在、事実上固定相場制を取っていますが、すでに国際経済にインボルブされている中国は、この固定相場制は早晩維持できなくなるだろうということをよく分かっていると思います。
貿易面でも輸出超過が続いており、また将来人民元の変動幅が拡大することを見通して、現在、不動産投機が積極的に行われており、経常収支、資本収支ともに黒字になっています。
固定相場制が取られている背景には、政策的な見地からの要請があると思います。例えば、内陸部の貧しい農民を守るために米国から安い農産物が入ってくるのを防ぐ、あるいは競争力の弱い国有企業が安い価格で輸出できるようにということです。
そのために、中国はドルを買って介入していますが、そうなると人民元がどんどん市中に供給されベースマネーが増え、これが金融政策の手足を縛っています。現在中国は非常に高い成長が続いているので、むしろ景気過熱を抑制して安定成長に持っていかなければならないのですが、固定相場制を維持するために介入を続けていけば、早晩行き詰まってくると思います。
中国がある時期に介入を放棄する形でハードランディングされると、中国経済が日本のバブルの崩壊のようなことにもなりかねず、そうなると日本は非常に大きな影響を受けることになるので、日本としては中国に対し、早めにこうした姿勢にブレーキを掛けていくことを要請していかなければならないと思います。
日本の場合、中国に工場を造り、そこから米国に輸出をしている企業もあるし、一方で中国の安い繊維製品などが入ってくると困る日本のメーカーもあるというように両面ありますが、いずれにせよ、日本経済にとっては中国経済が安定的な成長をしてくれることが大事であります。日本経済は、アメリカ、中国という二つのエンジンで活性化、維持されてきている面もあるので、中国に対して、人民元の変動幅拡大をもっときちんと主張していかなければならないと思っております。
その場合、これは早い時期に果断に処置していただく、そしてある程度の達成感が出るように処置していただかないと、いつまでも投機が続くということになりますので、日本は、中国の通貨主権を尊重しつつ、言うべきことははっきり言っていくという姿勢で臨んでいかなければならないと考えます。
幸い、中国は、財務対話に関しては、靖国問題や歴史認識の問題と切り離して考えているようですので、日本は、中国の財務部とのパイプはきちっとつなげて、これからも要請していく必要があると思います。 |
追伸:7月21日夕方、中国人民銀行は「人民元の為替レートを1ドル=8.28元から8.11元に2%切り上げる。」、「米ドルのみに連動させてきた現行制度を見直し、ユーロや円も含めた複数通貨の動きを参考に調整する制度に切り替える。」との発表をしました。中国の為替制度の大幅な見直しは約11年ぶりです。私の調査会での発言が、まるで中国政府に届いたかのような時を得たニュースに驚きました。中国政府の取った措置を歓迎するとともに、今後の対応を注視したいと思います。 |
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