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活動報告
  平成18年の活動報告
 
参議院ODA調査でモンゴル・中国に出張

中国医科大学にて 
中国医科大学にて

参議院はその独自性を発揮するために、決算の審議を重視しています。特にODA(政府開発援助)が有効に行われているか審査するため、「政府開発援助等に関する特別委員会」が設置されており、私は同委員会に所属しています。今回参議院ODA調査団を4つの班に分けて世界各地に派遣し、ODAの実態調査をすることとしました。私の属する第1班はモンゴル・中国を担当することとなり、8月6日から11日までの6日間、モンゴルのウランバートル市、中国の撫順市、瀋陽市のODAの実態を調査してきました。参加議員は私のほか、自民党の小泉昭男議員、田村耕太郎議員、民主党の足立信也議員、那谷屋正義議員、公明党の鰐淵洋子議員の6人です。


◆モンゴル国のODA調査

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ガンゾリク大蔵副大臣らと意見交換をする
ガンゾリク大蔵副大臣らと意見交換をする
モンゴル大蔵省で日本担当を務めるガートランさんと
モンゴル大蔵省で
日本担当を務めるガートランさんと
我々調査団一行は、8月6日ソウル経由でモンゴルの首都ウランバートルに午後11時過ぎに到着しました。
翌日、まず、ウランバートル市のダンバダルジャーの丘に建てられている日本人抑留中死亡者慰霊碑に献花した後、モンゴルの大蔵省を訪ね、ガンゾリク大蔵副大臣らと我が国からのODAについて意見交換しました。
ガンゾリク副大臣は、「モンゴルが計画経済から市場経済へ移行する困難な時期に日本の援助があったことに大変感謝している。」と述べ、最近モンゴル経済が好転し、去年の財政収支が初めて黒字になったことも日本が各プロジェクトを支援してくれた効果であると評価していました。
同時にガンゾリク副大臣は、「モンゴルは未だ日本の支援を必要としている」とODAの拡大を強く要請していました。特に空港の整備、環境、医療、教育などの分野での日本の協力が必要であることを強調していました。
ウランバートル市の第4火力発電所を視察
ウランバートル市の第4火力発電所を視察
現場責任者と
第4火力発電所の制御室を視察
第4火力発電所の制御室を視察
我が国が支援している鉄道輸送能力整備事業を視察
我が国が支援している
鉄道輸送能力整備事業を視察

その後、調査団一行はウランバートル市の第4火力発電所を視察しました。
この発電所は同市の電力供給の約70%を担っていますが、旧ソ連の設計製造で効率が悪く、大気汚染物質の排出が多く、事故も多発するなどの問題を抱えていました。
我が国はこの発電所に対し、無償資金協力や円借款の供与により支援してきました。
発電所を視察している時、エレベーターが途中で止まり約20分間エレベーターの中に閉じ込められてしまいました。その間の不安な気持ちを自ら体験しました。エレベーター故障の原因も再稼動した理由もわからずじまいでした。
我が国としては、この旧式の発電所に対し更なる支援を続けるのか、新たな発電所の建設を誘導していくのか判断に悩むところだと思います。
その後、我が国が支援しているモンゴルの鉄道輸送能力整備事業やウランバートル市の道路整備事業の実施状況を視察しました。
ウランバートル市の舗装道路は車両台数が増加しているにもかかわらず、ほとんど修理されておらず、特に厳冬期における凍結・融解の繰り返しにより路面の悪化が進行し、いわゆるデコボコ道ばかりですが、我が国が支援している太陽道路と呼ばれる道路は十分に整備されており、物流の効率化や粉塵公害の軽減による環境改善に貢献しているとのことでした。
8月7日の夜は、ウランバートル市の大学や初中等学校の教師などとして活動している青年海外協力隊やシニア海外ボランティアの方々と懇談しました。
これらの方々は必ずしもモンゴルへの派遣を希望した方々ばかりではなく、また、日本とは気候や食生活の違いなども大きく、様々な面で苦労されていることが伝わってきました。そうした環境の中でも、モンゴルの人々のために、また日本とモンゴルの架け橋として奮闘されているボランティアの方々に本当に頭が下がる思いがしました。
モンゴル・日本センターで働くモンゴル人スタッフの方々と
モンゴル・日本センターで働く
モンゴル人スタッフの方々と
モンゴル・日本センターで働くモンゴル人スタッフ(図書室担当)の方々と
モンゴル・日本センターで働く
モンゴル人スタッフ(図書室担当)の方々と
ウランバートル市のバトバヤル市長と
ウランバートル市のバトバヤル市長と
ゴミ処分場現場でハエが多数飛び交う中、日本人スタッフから説明を受ける
ゴミ処分場現場でハエが多数飛び交う中、
日本人スタッフから説明を受ける
8月8日午前中は、まずモンゴル・日本人材開発センター(モンゴル・日本センター)を視察しました。
モンゴル・日本センターは、モンゴル、日本両国の協議の上、日本政府の無償資金協力によりモンゴル国立総合大学の一角に建設されました。モンゴル・日本センターの事業は、独立行政法人国際協力機構(JICA)のプロジェクトとして実施されています。
同センターは、モンゴルと日本の相互交流を通じて、モンゴルの特徴を十分に理解し、その理解に基づいてモンゴルに適した市場経済化の道を探り、両国の理解を促進し、友好関係を深めることを目的としています。
イベント開催や施設の利用、様々なサービスによってモンゴルと日本の人材の育成を目指しています。同センターには、開所以来平成18年3月現在でのべ40万人以上が訪れています。
続いて、ウランバートル市役所を訪問し、バトバヤル市長と会談しました。そして、担当者よりウランバートル市廃棄物管理計画について説明を受けました。
ウランバートル市は、人口の急増や市場経済化に伴う消費生活の進展により、ゴミの排出量が増加しただけでなく、処分場におけるゴミの自然発火や周辺への飛散等が深刻な問題を引き起こしていました。
我が国の支援で「廃棄物管理マスタープラン」が策定され、現在、シニア海外ボランティアが派遣され、活躍しています。
我々調査団一行はゴミ処分場に出向いて現地も視察しました。
この視察を通じて、我が国の協力に市当局は大変感謝していることを十分に感じ取りましたが、一方でこのプロジェクトを請け負っている我が国の民間企業の現場担当者の中に、モンゴル人は環境意識が低いとして、見下すような態度で市役所の幹部を前に説明する人もいて、我が国のODA関係者の姿勢について反省すべき点もあるように感じました。
第97初中等学校を視察
第97初中等学校を視察
生徒は夏休み中でいなかったが、
先生から現状説明を受けた
第92番初中等学校で
第92番初中等学校では、
夏休み中ではあるが、
生徒、先生、父母が集まり歓迎を受けた


午後は我が国の無償資金協力によって整備が進められている初中等教育の現場を視察するため、第97番初中等学校と第92番初中等学校を訪れました。
モンゴルでは都市部への人口流入が進み、一日三交代で授業を行わざるを得ない学校もあり、学習環境の悪化が問題となっています。
各学校とも我が国の支援による施設には日の丸を表示し、先生方も大変感謝の気持を表明していました。
さらに、ウランバートル市の中心部から約35キロ離れたナライハ区の幼稚園を視察しました。
ナライハ区民の約25%はモンゴルでは少数派のカザフ人ですが、カザフ人の子供達はカザフ語を使用するためモンゴル語を十分に理解できず、幼稚園に通っていない子供が初等学校に入ってからドロップアウトするケースも多いとのことです。我が国の支援により毎年75人の子供達が幼稚園に通えるようになり、カザフ族の就労前教育不足の解消に貢献しているとのことでした。

◆中国のODA調査

中国撫順市の社会福祉院で孤児や障害児と
中国撫順市の社会福祉院で孤児や障害児と
中国部順市の社会福祉院で
中国部順市の社会福祉院で
明るく遊戯をする孤児や障害児
中国医科大学を視察
中国医科大学を視察


8月9日は、ウランバートル市を朝早く出発し、北京経由で中国遼寧省の瀋陽市に入りました。
瀋陽市で遼寧省人民政府の常務副省長の許衛国氏や対外貿易経済合作庁の幹部の方々と会談しました。
翌10日は、撫順市の炭鉱を視察した後、撫順市の社会福祉院児童施設を訪問しました。
この撫順市の社会福祉院は、1982年に設立された福祉施設で、孤児と障害者の療養や生活支援を行っています。貧困層の中には子供を捨てる人もあり、近年孤児の数が増加しています。撫順市が増設した児童棟において、我が国は草の根・人間の安全保障無償資金協力により機材の整備を支援しました。
社会福祉院のスタッフの出迎えを受け、施設内を視察しましたが、明るく遊戯する子供の姿に人間社会の影の部分を見たような思いがしました。
次に中国医科大学の視察をしました。
中国医科大学は1961年から独自に日本語による医学教育を実施していましたが、我が国はこの日本語医学教育の充実を目的としてJICAを通じた技術協力のプロジェクトを開始しました。
中国の農村部では白内障は適切な治療で開眼が可能であるにもかかわらず、進行した白内障による失明者への対応手立てがほとんどありません。
中国医科大学と金沢医科大学は、両校の継続的な交流をし、共同で農村部における白内障などの失明事態を調査するとともに、農村部医療に貢献する意思を持つ若手眼科医を育成しています。

◆まとめ

我が国は従前より世界有数のODA供与国であり、特に1990年代には主要各国の援助実績は総じて横ばい若しくは減少が続いた中で一貫してトップドナーの地位を維持し、現在は世界第2位となっています。今回の調査を通じて、貧困の撲滅や初等教育の普及などに果たす我が国のODAの役割の大きさを十分に認識することができました。
しかしながら、ODAの執行に関しては、非効率性が課題とされ、現在でも、(1)援助先の真のニーズに合致していない (2)設計・見積りが現地の仕様水準等から見て割高である (3)価格決定過程が競争的とは言い難いなど多くの問題点が指摘されています。
我が国の厳しい財政事情から、国内事業の歳出削減が課題とされる以上、ODAについても絶えず厳しい見直しをしていかなければなりません。
我が国のODAが国際的な評価・信頼を維持し続けるためには、限られた資源で最大の効果が上がるようODAの質の改善が急務です。
これからのODAについては、途上国の自立的発展に資する事業に特化するとともに、我が国の外交を効果的に展開する観点から、供与対象地域・分野の戦略的重点化を図ることが求められています。
また徹底したコスト削減によって費用対効果を最大化しなければならないことは言うまでもありません。
こうした観点に立って今回のODA調査を振り返ってみますと、対中国経済協力については、ODA供与を開始した当時と状況は変化していることも踏まえなければならないと感じました。
ODAの供与を受けている中国の関係者は皆、我々調査団に対して十分に感謝の意を表明し、ODAの継続を強く要請していました。
そして我々が視察したプロジェクトはそれぞれの地域の方々に役立っており、その限りにおいて日中関係の維持・改善に貢献していることは十分に感じ取れました。
しかしながら、我が国の厳しい財政事情、中国の国力増大を考えると、まず対中国経済協力の大部分を占める円借款については、2008年の北京オリンピック前までに、その新規供与を円満終了するという2005年4月の日中外相会談の共通認識の線で対応するのが適当であると思います。
ただし、環境、教育、医療等、我が国として無償資金協力、技術協力等を続けていかなければならない分野はまだあると思います。
今後は、対象分野の戦略的重点化を図り、個々の案件についてはよく精査し、我が国の国民の理解と支援の下で国益を踏まえつつ効率的に援助を実施する必要があると考えます。
対モンゴル援助については、モンゴルが中国とロシアという大国に挟まれた内陸国として北東アジア地域において地政学的に重要な位置を占めており、同地域が我が国の安全保障また経済的繁栄と深く関連していることを考えると、モンゴルの一層の市場経済化を支援することは我が国にとっても意義は大きいと思います。
しかしながら、対モンゴルODAについても、個々の案件についてその経済・援助効果や外交効果をきちんと検証していかなければならないと感じさせられました。
我が国の厳しい財政事情の下でいかに国際的貢献を有効に行っていくのかという重要課題を自分の目で見ながら考えることのできた有意義な出張でした。
そして、今回のODA調査を通じ、途上国の厳しい環境下でODAの実施に携わっておられる多くのスタッフやボランティアの方々の真摯な活動があってこそ各国との友好関係が築かれ、国際的な評価が高まっていくのだということを十分に実感しました。
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