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5月7日の午前に、我々一行はドイツ連邦政府の経済技術省を訪問し、ホーマン事務次官、シュナイダー総合エネルギー政策部長らと懇談しました。
ホーマン事務次官は、気候変動防止について、「エネルギーの最高の効率性を追求すること」と「地球規模の国際的な課題であること」を常に念頭に置いて対策を進めるべきであると強調しました。
「最高の効率性を追求するための革新的な技術開発を供給、需要それぞれについて進めなければならない。」とし、「供給面では再生可能エネルギーへの移行をさらに推進しなければならないが、原子力発電については、再生可能エネルギーで完全に賄うことが出来るようになるまでは、過渡期として利用していくべきエネルギーである。」と述べ、「経済技術省の考え方は環境省の考え方とは違う。」と言い切っていたのが印象的でした。
そして需要面における技術開発について、特に自動車、建物の効率性を追求することが重要であるとし、ドイツの先駆的な取組みについて説明がありました。
「気候変動防止は地球規模の国際的な課題であること」について、ホーマン事務次官は、「ポスト京都に向けた国際的な枠組みを早期に決定しなければならないし、又先進工業国と新興国が対話を続けることが重要である。」と強調する一方、「だからと言って、それぞれの国が国レベルでの対策をなおざりにしてはいけない。」とも述べ、ドイツ政府が決定している「統合エネルギー・気候プログラム」における幅広いCO2削減策について説明していました。ドイツ政府が2007年に決定した「統合エネルギー・気候プログラム」は、その前文に、「エネルギー・気候政策は、野心的な目標が具体的措置を通じて実施されてこそ信憑性を持つものである。ドイツはこうして、国際的気候変動防止における先導的役割を果たしていく。」と述べられており、各分野における目標と主な対策が定められています。例えば、発電における再生可能エネルギーの割合を現在の13%強から2020年までに25〜30%に増やし、その後も持続的に引き上げていくことを目標とし、再生可能エネルギー法を改正することとしています。特に洋上風力発電所に対する電力買取価格を新たに規定しています。又、熱供給における再生可能エネルギーの割合を2020年までに14%に引き上げることを目指し、経済性が確保される範囲での新築建物における再生可能エネルギーの利用義務を定めています。
さらに、ホーマン事務次官は、「再生可能エネルギーを推進することによって、エネルギーの輸入依存度を下げることが出来、エネルギーの安定性の確保にも繋がるし、ひいてはエネルギーコストが下がっていくことになる。」と述べていました。
我々一行との質疑応答の中で、ドイツで進めているバイオエタノールの問題に関し、E10(自動車に使うガソリンにバイオエタノールを10%混合すること)について、「今、見直しを進めている。」と述べ、その理由として、「輸入車を含め全ての車輌についてE10を導入することは技術的に無理があること」と、「E10の場合は、ドイツにおける生産だけではカバーできず、輸入しなければならず、そうなると食糧との競合問題が起きること」を挙げていました。
又、ホーマン事務次官は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度について、「コストが高くつく制度なので、誰かが負担しなければならない。消費者の負担が行き過ぎると、保証価格のあり方に議論が波及する。」と述べ、現行制度に問題があることも滲ませました。 |
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ドイツ連邦政府の経済技術省でのホーマン事務次官(左)らとの懇談を終えて会議室を出るところ。ホーマン氏は我々一行がおみやげとして差し上げた風呂敷を手にしている。 |
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我々一行は経済技術省への訪問を終え、バスでテューリンゲン州へ向かいました。ドイツのアウトバーンを3時間ほどバスで走りましたが、緑と黄色の畑が一面に広がっている風景はまさに圧巻でした。緑の畑は麦、黄色の畑は菜の花で、見渡す限り緑と黄色のまるで絵に描いたような景色でした。
ドイツではガソリン車よりもディーゼル車の方が多く、菜種からバイオディーゼルを作っているのです。一面に広がる麦畑、菜の花畑の中に風力発電の施設が建っていて、まさにドイツならではの風景と言えるでしょう。私はバスの窓からカメラでこうした景色を撮りました。写真では実際の壮観さは出ていませんが、掲載させていただきます。 |
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昼すぎに、我々一行はテューリンゲン州のイエナに到着しました。イエナのホテルで、昼食をとりながら、テューリンゲン州文化省のバウアー・ヴァープネグ次官、州経済振興公社のメッツガー氏などと懇談しました。
ヴァープネグ次官は「日本は古来からの伝統・文化を守りながら、新しい科学技術を開発していることに大きな敬意を持っている。テューリンゲン州は小さな日本になりたいと控え目な希望を持っている。」と述べ、私は、うまいことを言うなと感心しました。
テューリンゲン州は州としての規模は小さいものの、ドイツの中央に位置しており、中世の城塞や伝統ある劇場がたくさんあり、歴史と自然に恵まれた魅力ある街が続いています。
又、テューリンゲン州の熱エネルギーに占める再生可能エネルギーの割合は20%となっており、ドイツの各州の中でトップになっています。 |
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テューリンゲン州首相府儀典官のヤーナ・ヤーリッツさんと。
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5月7日の午後は、テューリンゲン州イエナにあるマックス・プランク生物地球化学研究所を視察しました。 同研究所は、1997年に創設され、地球規模の物質循環とそれにかかわる生物・化学・物理的変動を研究対象としています。現在は合計で127名の研究者、スタッフが働いています。 |
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テューリンゲン州イエナのマックス・プランク生物地球化学研究所を視察。(右端が中川雅治) |
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マックス・プランク生物地球化学研究所の視察を終え、我々一行はテューリンゲン州ワイマールへ移動し、インテリジェント建築センターを視察しました。同センターは、我々一行が訪問したその日(5月7日)が開所式で、開所式に参加したテューリンゲン州のアルトハウス首相とも短い時間でしたが、懇談することができました。
この研究所は高効率建築など最先端の建築技術を研究していますが、建築分野の研究と現場の建築活動の距離を縮めることを目指しています。 |
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テューリンゲン州ワイマールのインテリジェント建築センターで同州のアルトハウス首相を囲んで。(右から中川雅治、小池百合子元環境大臣、アルトハウス首相、岡田克也民主党副代表、福山哲郎参議院議員) |
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インテリジェント建築センターで高効率建築の説明をするバウハウス大学の教授 |
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バウハウス大学のルート教授が示した方程式(地表を直径2000kmのビニールハウスで覆って、そこから発生する熱上気流を集中させてタービンを回すと、世界中のエネルギー需要が賄えることを証明する算式だそうです。) |
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5月7日の夜は、テューリンゲン州における伝説の3要塞の一つと言われるヴェステ・ヴァクセンブルクの中の食堂で同州のラインホルツ経済技術労働大臣主催の夕食会が行われました。夕食会にはテューリンゲン州の首相府、経済技術労働省の幹部のほかバウハウス大学のツィンマーマン学長や同州の経済振興公社の幹部も参加し、環境・エネルギー問題はもとより、経済、雇用問題まで様々な課題について活発な意見交換をしながらの食事会となりました。「ドイツ人は議論好き」と言われますが、全くその通りだと改めて感心した次第です。 |
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伝説の3要塞の1つと言われるヴェステ・ヴァクセンブルク |
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ヴェステ・ヴァクセンブルクから見渡した夕暮れのテューリンゲン盆地
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5月8日は、テューリンゲン州経済振興公社のクレイ代表らとの朝食会の後、エアゾル・ソーラーセル社の太陽電池工場を視察しました。
エアゾル社はエアフルトに拠点を置くドイツのシリコン系ウエハー・太陽電池製造メーカーで、シリコン、ウエハー、太陽電池、モジュールの各部門を擁しています。主力商品は一辺156mmの太陽電池です。
今回、我々一行が視察したのは2007年11月にガブリエル連邦環境・自然保護・原子力安全大臣臨席のもと開設され、今年の初めに操業開始された太陽電池工場です。ラーフ工場長は、最新の技術を取り入れた太陽電池工場を案内した後、会議室でプレゼンテーションをし、その後フォン・デーヴィッツ財務担当取締役とともに我々一行と懇談しました。
太陽電池に使うソーラーセルの原料となるシリコンは世界的に見れば不足しており、これが大量生産のネックになると言われることがありますが、この点について、ラーフ工場長は、「シリコンは砂から作れるが、それには大規模な工場が要る。シリコンがないと言われるのは世界を見渡してシリコンを製造する化学工場が十分にないということだ。」と語っていました。ラーフ工場長は、「世界の電力需要や環境問題を考えると、太陽電池は今後とも大きな伸びが予想されるので、それにはもっとシリコンを製造する工場が必要になる。エアゾル社はシリコンを製造する工場をさらに増設していく予定だ。」と述べていました。
フォン・デーヴィッツ財務担当取締役は、「エアゾル社は、2017年まで長期契約によりシリコンの原料調達の目途はついている。又、これから作る製品の納入先(買取先)もほとんど決まっている。これが日本企業との違いだ。」と述べ、「エアゾル社のこの成長計画を実現するため、5億ユーロを投じて次のシリコン製造工場を建てる予定である。」と話していました。
又、デーヴィッツ氏は、「現在、ドイツにはソーラーセルに関して様々な助成策があるが、今後はこうした助成策を減らしていくべきであるという議論がなされている。そうなると、ソーラー業界は大変であるが、今、ソーラー業界は沸いているので、助成策が減っても何とかやっていけると思う。」と強気の見通しを述べていました。さらに、デーヴィッツ氏は、「全世界のソーラーセルの50%がドイツに設置されるまでに伸びたのは、電力会社による太陽光発電の固定価格買取制度のお陰であるが、原子力発電や旧来の発電に関連する企業から、ソーラーセルに関する助成策に反対の声が上がっており、ロビー活動も活発になっている。」と語っていました。
今後、ソーラーセル業界は、より薄く、より効率の良い製品の開発を目指して競争が続くと予想されます。日本の企業がドイツに遅れをとらず、この面での技術競争に勝つべく官民挙げての取組みが必要であると痛感しました。 |
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エアゾル・ソーラーセル社の太陽電池工場の視察を終え、我々一行はエアフルト空港からミュンヘンへ向け出発しました。
ミュンヘンに到着後、我々一行はドイツの代表的な自動車メーカーであるBMW本社を訪問し、BMWの技術担当役員らと懇談しました。クリューガーシニアヴァイスプレジデント(技術担当)やベッカーヴァイスプレジデント(対政府渉外担当)の概要説明の後、ヘルチュルヴァイスプレジデント(持続可能性・環境保護担当)による「BMWグループの持続可能な経済活動」と題するプレゼンテーションがありました。
BMWの環境配慮の取組みに心を打たれましたが、同時に従業員を大事にする社風が今日のBMWを築いていることを十分に感じ取りました。 |
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BMW本社でヴァイスプレジデントのベッカー氏(左)、ヘルチュル氏(右)らと懇談。 |
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5月9日は、午前中に、シーメンス・フォーラムを訪問し、温暖化防止に係る展示場を視察しました。下に掲載した写真は、先進国の1日1人あたりのCO2排出量37.8kgCO2のCO2を入れてある風船です。シーメンス・フォーラムの展示場の入口に展示されており、先進国のCO2排出量がどれだけ大きいものか、わかりやすく可視化しています。
又展示場では、シーメンス社の多機能メーターや省CO2型のガス照明、冷蔵庫等の家電機器について説明を受けました。
その後、会議室で、シーメンス社のヴーヒェラー取締役会相談役、ブルークアジア・オーストラリア企業開発戦略担当副社長、ミュラー対政府渉外担当副社長、ノイハウス産業環境保護部長らからシーメンス社の地球温暖化対策への取組みについて説明を受けた後、意見交換をしました。 |
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シーメンス・フォーラムに展示されている、先進国の1日1人あたりのCO2排出量37.8kgCO2のCO2を入れてある風船 |
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シーメンス・フォーラムの展示場で説明を受ける中川雅治(左) |
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シーメンス・フォーラムの視察を終え、我々一行は5月8日午後3時50分、ミュンヘン空港を出発し、帰路に着きました。
今回のドイツ訪問では、ドイツ政府の行き届いた日程調整により、ドイツの環境関係施設・工場の視察やドイツ政府、議会、経済界、学界など様々な環境関係者との意見交換の場を作っていただき、短い時間でしたが、多くのことを学ばせていただきました。
ドイツ政府並びに在日ドイツ大使館の関係者の方々に厚く御礼申し上げます。
とりわけ、我々一行が日本を出発し、日本に帰国するまでの全日程に同行して通訳をしてくださった在日ドイツ大使館の田口絵美さんと近藤あずささんに心より感謝申し上げます。 |