5月30日、31日の両日にわたって、ベルギー・ブリュッセルの欧州議会議事堂内で開催された日本・EU議員会議に、私は、衆参7名より成る日本国会代表団の一員として出席し、欧州議会の議員の方々やEUの大統領にあたるヘルマン・ファン=ロンパイ欧州理事会議長らと意見交換してまいりました。
日本・EU議員会議は、1978年(昭和53年)、倉成正衆議院議員を団長とする衆参10名の日本国会代表団が欧州議会を訪問して「日本・EC議員会議」が開催されたのがはじまりです。
日本・EU議員会議は、毎年1回日欧交互に代表団を派遣して定期的に会議を開いており、今年は33回目になります。
日本の国会議員代表団は鳩山由紀夫元首相を団長に、民主党5名、自民党2名で構成され、欧州議会側はオランダ出身のファン・バーレン議員を団長に、各議題についてそれぞれ関心のある多くの議員が参加しました。
欧州の債務危機がさらに混迷を深めている状況の中で、多くのEU議員などから率直な意見を聞くことが出来たことは大変有意義でした。今回の会議や多くの議員との個別の意見交換を通じて、EUは、通貨統合は果たしたが、政治共同体としては機能していない実態をまざまざと見せつけられた思いがしました。
会議の前後に、日本国会代表団一行は、EUの大統領に相当するヘルマン・ファン=ロンパイ欧州理事会議長、エルマー・ブローク欧州議会外務委員長、クリスタリーナ・ゲオルギエヴァ欧州委員などと面談し、意見交換しました。
さらに、ブリューゲル研究所を訪問し、ツォルト・ダルヴァス博士から欧州の債務危機の現状分析と今後の見通しなどを聞きました。
博士は「ギリシアがユーロから離脱するには様々な切り替え措置が必要で実際には不可能であるから、ユーロから離脱することはないだろう」と述べていました。
欧州の債務危機の状況を見ていますと、市場が政治を支配しているような感すらあります。国民が緊縮財政にNOを突きつけても、市場がそれを許してくれません。
日本では深刻な財政事情にあるにもかかわらず、消費税の5%アップも果して実現できるのかどうか厳しい政治の状況が続いています。世論調査でも消費税を2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げることについて、賛成は3割台にとどまっています。こうした状況の下で、政治や世論がいくら不条理だと思っても市場が断罪することもありえるわけです。
日本人は欧州の債務危機を未だ他人事と思っています。「日本はギリシアとは違う」、「日本国債はほとんどが国内で消化されている」などと言っても、市場がそれで納得してくれるものではないということを、本当に理不尽なことではあっても受入れなければ日本だっていつ危機に陥るかわからないと思うのです。
EUに出張して、私はそのことを改めて強く認識させられました。
又、日本とEUとの間で、EPA(経済連携協定)締結に向けての交渉のためのプロセスが開始されていますが、EU側は、日本には様々な規制があり、日本市場自体も閉鎖的であるとし、大きな不満を持っていることを改めて認識しました。
しかしながら、「日本市場は閉鎖的」との批判は先入観、固定観念に基づくものとも言えますし、安全基準など我が国の主権に基づく規制について、それを問題視するEU側の態度は納得できるものではありません。
日本・EU双方がWIN−WINの関係になるようなEPA締結に向けて、お互いに理解を深めるよう更なる努力をしていくことが必要だと考えます。
又、会議の中で、EU議会のベルギー出身のフリーダ・ブレポルス議員より「日本は死刑制度が存続しているし、従軍慰安婦問題も抱え、人権意識の低い国である」旨の非難の発言がありましたが、直ちに、フランス出身のブルーノ・ゴルニッシュ議員から「EUが日本を人権問題で非難するなら、同じく死刑制度が存続している米国や、さらに中国を何故非難しないのか」と日本をかばう発言が出ました。こうしたやりとりを聞いて、EU議会の内幕を垣間見たような気がしました。
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日本・EU議員会議の会場で(右端が中川雅治) |
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日本・EU議員会議で発言する中川雅治 |
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日本・EU議員会議の会場で(右はデンマーク出身のクリステル・シャルデモウス議員) |
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EUの大統領に相当するヘルマン・ファン=ロンパイ欧州理事会議長と会談 |
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エルマー・ブローク欧州議会外務委員長(右端)との意見交換の様子 (中央が中川雅治) |
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ベルギーの国会を見学しましたが、上院(日本の参議院に相当)は赤いじゅうたん、下院(日本の衆議院に相当)は青いじゅうたんが敷かれており、議場の雰囲気も全く違っていました。
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