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活動報告
 

平成20年の活動報告

 
ドイツを訪問(中編)
 

 翌5月6日の朝7時45分から1時間にわたり、ユルゲン・トリッティーン元連邦環境・自然保護・原子力安全大臣との朝食会が行われました。
 私は2005年4月、日本で開かれた3Rイニシアティブ閣僚会合のレセプションで当時のトリッティーン大臣とお目にかかり、短時間でしたが懇談しましたので、今回は2度目の意見交換の機会となりました。
 席上、トリッティーン氏は「今後の世界の推移を見通す場合、5つのリスクを考えなければならない。」と述べ、(1)温暖化の進行(2)有限の資源(3)貧困と開発(4)大量破壊兵器の拡散(5)エネルギー問題を挙げ、とりわけエネルギーの問題が他の全てのリスクに繋がっていくと強調していました。トリッティーン氏は、「我々がエネルギー需要を抑えないと、エネルギー価格は下がらない。省エネの推進、エネルギー効率の向上、再生可能エネルギーの利用拡大を図っていくことが、今後の世界の安全保障のカギとなる。」と述べました。
 私は、トリッティーン氏の見識に感銘を受けましたが、中でもバイオ燃料についての見解は大変参考になりました。トリッティーン氏は「バイオ燃料については、それを拡大していっても我々の温暖化対策の目標達成には寄与しないし、世界の貧困の解消にも繋がらない。」と述べ始め、私は衝撃を受けました。そして、トリッティーン氏は、「ドイツや日本の人々は石油高騰を嘆くことが出来るが、アフリカ諸国の人は嘆くこともできないことを考えなければならない。」と語っていました。トリッティーン氏は「私はバイオ燃料に対して一義的に賛意を表明することは出来ない。例えばアメリカ大陸で生産されているバイオ燃料は非効率に生産されているし、多くの耕地を台無しにする形で生産されている。それ故、バイオ燃料についてはより効率的で、環境に配慮した新しい技術を開発しなくてはならない。例えば、竹や草などの木質から大規模にエネルギーを生産する第2世代のバイオ燃料の開発を進めなければならない。しかしながら、我々が自動車の運転という習慣自体を変えていき、しかも、ガス、電気を使う自動車にシフトさせていけば、第2世代のバイオ燃料の開発も必要なくなっていく。」と述べていました。

 
トリッティー元連邦環境・自然保護・原子力安全大臣との朝食会
  トリッティーン元連邦環境・自然保護・原子力安全大臣との朝食会の様子 (右から2人目がトリッティーン氏)  
 

 朝食会を終え、我々一行はドイツの交通・建設・都市開発省を訪問しました。同省では、建設政策・建設産業局のレナ課長やハイデリッヒ課長などから、ドイツの住宅・建築物における省エネ化の推進のための諸施策について詳細な説明がありました。
  ドイツには建物のエネルギー効率を証明する証明書・パス制度があり、公的建築物については、この証明書・パスを外部に掲示することとされています。我々一行はレナ課長・ハイデリッヒ課長との間で、証明書・パス制度やドイツにおける住宅・建築物の省エネ化を推進するための税制措置、融資制度などをめぐって質疑応答や意見交換をし、大変勉強になりました。
  この面での日本の政策は、ドイツに比べて相当遅れていることを痛感させられました。そして、我々にパワーポイントを使ってドイツの実情を熱心に説明する担当課長の省エネ住宅・建築物の推進にかける情熱を十分に感じ取りました。

 
ドイツの交通・建設・都市開発省のオルトン課長
  住宅・建物の省エネ化について説明するドイツ交通・建設・都市開発省の課長  

 5月6日の午後はドイツ連邦政府の環境・自然保護・原子力安全省を訪問し、マッハニック事務次官らと意見交換をしました。
 マッハニック事務次官は「地球温暖化対策には国際的な条約が必要であるが、そのためには全ての国が一定のコンセンサスを形成することが不可欠である。」と述べ、その内容として次の5点を挙げました。
(1)2050年までに温室効果ガスを50%削減することについて全ての国が共同して責任を負うこと
(2)先進工業国は2020年までに温室効果ガスを25〜40%削減する責任を負うこと
(3)先進工業国は(2)の目標を掲げるだけでなく、それを実現するための方策を可能とする法律等を成立させること
(4)先進工業国は気候変動に対する適応、技術移転を実現するための資金を提供すること
(5)発展途上国は、バリ・ロードマップについて、検証可能な対策を温室効果ガス削減に向けて準備していかなければならないし、又、国際競争にさらされている特定のセクターは、温暖化対策を受け入れる覚悟をしなくてはならないこと
 マッハニック事務次官は「以上の5点のうち、先進工業国としての責任についてドイツは全力で取り組んでいく。」と表明しました。
  我々一行とマッハニック事務次官との間でドイツの再生可能エネルギー、とりわけ太陽光発電の推進策について突っ込んだ意見交換が行われました。
  ドイツでは、再生可能エネルギー法(EEG)が制定されており、総電力供給における再生可能エネルギーの割合を2010年までに12.5%以上、2020年までに20%以上にすると定められています。そして、再生可能エネルギーによる発電設備からの発電電力を、電力会社に固定価格で20年間買い取ることを義務付ける制度があり、例えば、太陽光発電については、61〜78円/kwh(1ユーロ=160円で換算)と一般的な家庭向け電気代の3倍前後の買い取り価格が設定されているため、太陽光発電が急速に普及しました。電力会社が太陽光発電を買い取ることによるコスト増は一般の電力消費者の料金に転嫁されることになっています。
  この点について、我々一行はマッハニック事務次官に対して産業界、一般の国民はどのように受け止めているのか尋ねたところ、マッハニック事務次官は「産業界は短期的には価格転嫁による電力料金の上昇には反対であるが、長期的には国の方針を受け入れている。ドイツの一般国民は、再生可能エネルギー拡大の必要性を十分に理解しており、不満の声は特に出ていない。」と述べました。
 マッハニック事務次官から、ドイツの環境税導入の経緯、その効果や現時点での国民の受け止め方等についても詳細に聞くことが出来ました。

 
ドイツ連邦政府のマッハニック環境・自然保護・原子力安全賞事務次官
  ドイツ連邦政府の環境・自然保護・原子力安全省のマッハニック事務次官(右から2人目)らと意見交換。  
 

 環境・自然保護・原子力安全省の訪問を終え、我々一行はドイツ連邦議会議事堂を訪問しました。
  ドイツ連邦議会は4年の任期で選出される598人の議員により構成されています。この598議席の半数は州候補者名簿を用いた党への投票によって、さらにもう半数は299選挙区での候補者への投票によって配分されます。
  我々一行は本会議場や政党の議員総会を行う部屋などを回りましたが、夜8時になっても一般の見学客が本会議場の傍聴席などに大勢いるのを見て、開かれた国会という感じを強く持ちました。
 ドイツ連邦議会では本会議をさぼると100ユーロを支払わなくてはならないと聞きました。

 
ドイツ連邦議会の本会議場
ドイツ連邦議会の本会議場
 
ドイツ連邦議会の本会議場
  ドイツ連邦議会の本会議場で。日本の国会の本会議場と比べて傍聴席が広い。  
 
ドイツ連邦議会の政党の議員総会室
 
ドイツ連邦議会の政党の議員総会室
 
 

 ドイツ連邦議会議事堂の視察を終え、その後ドイツ議員協会会館へ移動し、そこで独日議員連盟主催の夕食会が行われました。夕食会にはヨルン・ティーセン独日議員連盟副会長(社会民主党)のほか同議連所属の各政党の議員が出席しました。
  現在のメルケル政権はキリスト教民主/社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)の大連立政権となっていますが、夕食会には、連立政権に参加していない政党からの出席者もあり、特に、原子力発電をめぐって活発な議論が展開され、私としてはドイツの各政党の意見の違いや政治情勢を知ることが出来、大変勉強になりました。
  連立政権に参加しているCDU所属の議員から、現在のメルケル政権の方針である脱原発について公然と批判する声も出た一方、緑の党所属の議員からは「脱原発は正しく、再生可能エネルギーで出来る限りカバーすべきだ」との見解が述べられました。
  また、北朝鮮問題、イラン問題など安全保障分野の様々な課題についても率直に意見交換することが出来、有意義な夕食会となりました。

 
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